2026-05-30
梅雨から夏にかけて、ベランダの隅や軒下にいつの間にか作られる「ハチの巣」。放置すると一気に爆発的な数へと増殖し、住民への健康被害や隣人トラブルに発展する非常に危険な存在です。そこで気になるのが、「賃貸物件にできたハチの巣の駆除費用は、大家と店借(入居者)のどちらが払うべきなのか?」という問題です。結論からお伝えすると、費用の負担区分はハチの巣ができた「場所」によって明確に分かれます。本記事では、法律的根拠から例外リスクまで徹底解説します。
結論から申し上げますと、ベランダや室内などの「専有部分」にできたハチの巣は店借(入居者)負担、エントランスや廊下などの「共用部分」にできたものは大家(オーナー)負担となるのが法的な基本原則です。
不動産取引の基本指針である民法、および一般的な賃貸借契約書において、それぞれの管理責任が以下のように定義されているためです。
| ハチの巣の発生場所 | 費用負担の対象 | 根拠となる管理責任・法律 |
|---|---|---|
| 専有部分 (ベランダ、室内、専用庭など) |
店借(入居者) | 善管注意義務 (民法第400条) |
| 共用部分 (エントランス、共有廊下、外壁、屋根など) |
大家(オーナー) | 修繕義務・維持管理責任 (民法第606条) |
民法第400条には「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」が定めされています。これは「借りている部屋を、社会通念上要求される程度に注意を払って綺麗に使い、維持管理しなさい」という義務です。
ベランダは入居者しか立ち入ることができない独立した空間(専用使用権が認められた専有部分に準ずるスペース)であるため、大家が毎日見回ってハチの侵入を防ぐことは物理的に不可能です。そのため、「ベランダにハチの巣を作らせないよう定期的にチェックし、初期段階で対処する」のは店借側の維持管理の範囲内と判断されます。放置して巣が巨大化した場合、店借の「注意怠慢」とみなされるケースがほとんどです。
一方で、民法第606条では大家に対して「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務」を課しています。エントランスや共有の階段、建物の外壁などはすべての住民が安全に使用すべきエリア(共用部分)です。ここにハチの巣ができると物件全体の安全性・居住性が損なわれるため、大家側の責任と費用で迅速に駆除業者を手配し、支払う必要があります。
ベランダのハチの巣を駆除する場合、専門業者に依頼するといくらかかるのでしょうか。ハチの種類や巣の大きさ、時期によって変動しますが、一般的な相場は10,000円〜50,000円です。ハチの種類別の基本料金相場は以下の通りです。
上記の基本料金に加え、梅雨・夏(7月〜10月の繁忙期)や、特定の難作業条件下では以下の追加費用(数千円〜20,000円程度)が発生します。
原則はベランダ=店借負担ですが、以下の3つの事由に該当する場合は、例外的に大家側が費用を全額、または一部負担すべきケースが存在します。自身の状況が当てはまっていないか必ず確認しましょう。
入居して数日〜1週間以内にベランダで巨大なハチの巣を見つけた場合、それは「前入居者の退去後から、自分が契約して入居するまでの空室期間」に作られた可能性が極めて高いです。物件を引き渡す時点での「瑕疵(かし=不具合)」とみなされるため、契約初期段階であれば大家の負担で駆除を請求できます。
ベランダの壁面に不自然な亀裂や穴が空いており、その内部や隙間にハチが営巣してしまった場合、原因は「建物のメンテナンス不足(大家の修繕義務違反)」にあります。店借の日常的な管理不足ではないため、大家負担となる可能性が非常に高くなります。
契約書の中に「害虫・害獣の駆除費用は、発生場所を問わず全て賃貸人が負担する」といった内容、あるいは管理費の中に「定額の害虫駆除付帯サービス」が含まれている場合は、契約内容が優先されます。連絡前に契約書の「修繕に関する特約」を確認してください。
ベランダ等でハチの巣を発見した際、自己判断で勝手に業者を呼んで駆除し、後から大家に請求することは絶対に避けてください。 事後報告では費用負担を拒否されるトラブルが多発しています。以下の手順を厳守してください。
春先(4月〜5月)に冬眠から目覚めた女王蜂は、たった1匹で巣を作り始めます。この時期の巣は直径数センチの「お椀をひっくり返したような形」で、ハチの数も数匹しかいません。
しかし、梅雨明けから夏(7月〜9月)にかけて、孵化した「働き蜂」が一斉に活動を開始します。こうなると巣の拡大スピードは文字通り爆発的になり、スズメバチであれば1ヶ月で直径20cm〜30cm以上の「バレーボール大の球体」へと成長し、内部のハチは数百匹規模に膨れ上がります。
「アシナガバチだから大人しい」と油断してはいけません。アシナガバチの毒素も非常に強力で、過去に刺された経験がある人が再度刺されると、急激な血圧低下や呼吸困難を引き起こす「アナフィラキシーショック」により、最悪の場合死亡に至るケースが毎年報告されています。直径5cmを超える巣、あるいはハチが頻繁に出入りしている巣の自家駆除は絶対にやめてください。
少しでも出費を抑え、安全に夏を越すためには、5月〜6月の「作りかけの小さな段階」で毎日ベランダの物干し竿の裏や室外機の周辺をチェックし、早期発見・早期対応を心がけることが、店借・大家の双方にとって最大の防衛策となります。
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